二人の世界 (by ジェームス赤木)

    ― 二人の世界(Ⅰ) ―
                                     written by James Akagi

 (続)俺の青春時代。大学四年生後期。来年4月からJ銀行の銀行員だ。この半年が準備期間。(さあ勉強だ)当時は計算機としては、まだ算盤(ソロバン)が主流の時代。電卓は、値段がとても高かつた。9月から珠算教室へ通うことにした。これが本当の運命の出会いとなる物語。その日は、俺の母親が上着のブレザーをクリーニング店に出していたため、学生服着用でその教室へ行くことになった。教室の先生は、私立女子高の商業科の珠算担当教諭で副業として小学生以上の生徒を教えていた女の先生だった。もう一人仲間がいた。女子大生らしき女の子だ。お互いに小学生時代以来の算盤(ソロバン)の練習。自己紹介を先生からやらされた。教室内は小学生、中学生、高校生が十数人先輩面(ズラ)して二人の新入生を興味深そうに迎えてくれた。たかがガキ共だ。俺は適当に挨拶した。彼女はキチンと挨拶。(しつかりしてるな)少し感心した俺。(さあ練習だ!)読み取り算、暗算、伝票算等ついて行けない。彼女も同じ。新入生二人は別メニュー。机も別に隔離された。二人だけ個別指導になった。彼女(オンナ)に負ける訳にはいかない。「男のプライド」が熱く高まってきた。高校時代は男女共学で女の子達を含めた級友同士がライバル心を燃やし競争したもの。彼女との珠算のレベルアツプ競争の始まり。彼女に勝った時の壮快感(楽しかつた)負けず嫌いの勝気な彼女。次の日には俺の負け。(くやしかつた)お互いに私的なことを話しあうのに時間はかからなかった。ごく自然に。教室に来る服をたまたま初日に学生服にしていた俺、そのままこの教室へは学生服で通っていた。それを見て彼女は、俺を高校生と勘違いして接していたことが分かつた。彼女は色白の顔、唇は赤く塗った口紅の色が鮮やかだった。まつげも長く上にカールし、俺の好きなお嬢様風。外見は女子大ニ、三年生に感じた。誰にでも笑顔を振りまく社交的な女の娘(こ)に見えた。(彼がいるだろうな)と思いつつ。
 でも、若い男と女。会話は弾む。彼女は地元の女子大一年生。将来の就職に備えての珠算の勉強。(感心した)俺は大学四年生の今になっての突訓。俺の近況報告だ。地元三流大学四年生。「ある地元の金融機関に就職が内定している」と伝える。それを聞いた彼女は、信用金庫か、信用組合程度の理解だったらしい。教室ではお互いに励まし合う。「珠算検定試験を受けたら」と先生から言われた。二ヶ月で三級程度までになったが、俺は「試験は受けない」と申し出た。「あなたは好きにしていいわ。彼女は受けなさい」と。負けず嫌いな彼女、見事三級試験合格。(さすが未来の俺の妻)その時はまだ恋心はまつたくなし。
 ある日、彼女があるハリウツド映画の招待券を二枚くれた。「あなたの彼女といっしょに」と。俺には同行する娘(こ)は誰もいない時だ。次の日教室の帰り道、彼女を呼びとめた。「俺には彼女はいないから君と行こう、都合のいい日を教えてよ」と。彼女はニコニコしながら「私は別にレツスン等があり無理です」とヤンワリと断られた。(当時彼女には三、四人のボーイフレンドがいた)この謝絶の言葉、俺のハートに火が点(つ)いた。
 大学を卒業するまで個人的に付き合う女の子とは無縁だと思っていた俺。彼女の情報収集を始めることになる。「俺の同じ大学の同期生」「高校時代から付き合っている私立大学生」「社交ダンスをしていた彼女のパートナーの社会人等」のボーイフレンドが浮かび上がった。(よし、すべてブチ壊してやる)ライバル心で闘志がメラメラと湧いて来た。決めると早い。それとなく自然体で彼女と会話。ボーイフレンドと逢う日を特定し、偶然出会った振りをして俺の存在感を彼等に植え付け排除するのに時間はかからなかつた。昔、夜の巷で暴れていた元空手部の暴れん坊です。途中で彼女が感ずいて俺のストーカー的行為にあきれだした。彼女にひどく叱られた。しかし、もう一人大学の同期生が残っていた。「一回だけ」とデイトの約束を取り付けた。(そうだ、俺の大学の学園祭に連れて行こう)と。同期のボ-イフレンドとワザとかち合うように。大学の学園祭当日が来た。彼女が「学園祭でなく他へ行きたい」と言い出した。彼からも誘われていたが俺の約束が先だったので、彼の誘いを断っていた。その辺の事情は百も承知。学内には俺のファンが多くいた。情報収集能力と作戦実行力は俺が上。事前に「俺が彼女を学園祭に連れて行く」という情報を友人を介して彼に流していた。彼女は何も知らないシンデレラ姫。彼女の顔を立てないと俺もヤバイ。心配顔の彼女の横顔も素敵だった。(本当に惚れたかも?)案の定だ。彼は大学の門の前にいた。知らない顔をして車で奥の駐車場へ。彼が飛んで来た。彼女に向かつて「どうしてこいつと来たんだ」という男。「ごめんなさい」という困った顔の彼女がいた。
 俺に対して文句を言うばかり思っていた。彼女のピンチだ。次の瞬間「俺の女に偉そうなことを言うな!文句があるならかかつてこい!」と啖呵(たんか)をきつた俺。日活映画によく出て来るシーンだ。石原裕次郎の登場だ。チョツト足の長さが気になるが(裕次郎の弟分だ)ここまではシナリオどうり。来る前に彼女との約束で「喧嘩だけはしないで」と。「もちろんだ俺は紳士だ、約束するよ」と答えていた俺。(しまつた!)生まれて初めて本気になった。やりすぎた。迫力があり過ぎた。男は動かなかった、動けなかった、固まっていた。彼女が必死に俺を止めた。でも我慢出来なかった俺。彼女の瞳に涙が。ヤバイ約束を破ってしまつた。大学構内だ。彼女のために「今日のところは穏便に楽しむことにしよう」と和解が成立(ヤクザの世界か?)学園内の各クラブの出店した店を回る。彼女の後ろをついて行く深く反省している俺がいた。しばらくすると彼女も機嫌を直してくれる。(良かった、でも今日で終りだ、嫌われた)と本気で思った。車で送る帰り道、いつも陽気な俺だったが、その時は何も言う気にならなかった。しばらく(沈黙)・・・
 ふと横顔を見た。嬉しそうな顔に見えた。(いつも笑顔を絶やさない娘だから)と思った。自宅に着いた。彼女から「今度いつ誘ってくださるの?」と可愛い笑顔。信じられなかった。次のデイトを約束して帰る。今まで一度も味わったこともない爽快感だった・・・

     「二人の世界」(池田充男作詞・石原裕次郎唄)
        (1)君の横顔 素敵だぜ すねたその瞳(め)が 好きなのさ
            もつとお寄りよ 離れずに踊ろうよ 
              小さなフロアーの ナイトクラブ 夢の世界さ・・・

                                       <投稿:ジェームス赤木>

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