嵐を呼ぶ男

  ― 嵐を呼ぶ男 ―
                                     by James Akagi.

 (続)俺の青春時代。 大学四年生春。 当時は四月から就職試験解禁。 大企業は不況にも係わらず強気で青田買い。 三流大学といえども大企業への道があった。 まだピント来ない時期。 他の学友達が就職課の前で、求人表を見て一生懸命メモしている光景が不思議だった。
 多くの学生が群がる(就職案内の)掲示板に近づくのは、至難のワザ。 講義が始まって学生が少なくなるのを待ち、教室を抜け出し掲示板へ。 初任給を多く出す企業を最初に探した。 (あった!) 金融機関だ。 都市銀行のグループの中で下位にあったT銀行と、全国地方銀行の中でトツプグループにあったJ銀行だった。 どちらも学校推薦の申し込み期限が迫っていた。 T都市銀行へ行けば、この町を出て待望の県外へ、、、。 夢に描いた都会生活が待っている。 でも、J地方銀行は地元だ。 就職課の事務担当のお姉さんに「一生のお願い」をして、両方の企業情報を入手する。 企業情報によれば、J地方銀行も、都会に支店網を持っており転勤があり、都会生活も可能だ。
 (決めた!J地方銀行だ…)
 すぐ事務担当のお姉さんの窓口へ走る。 学校推薦の期限は本日が締め切りだった。
 良かった。 間に合った。
 就職試験は秋頃だと、勝手に思い込んでいた。 これまでは適当に遊び、学園生活を十分楽しんでいた。が、ここに至ってようやく、本格的に人生のチャレンジを実感し始める。 二年生、三年生と、要領良く点数稼ぎをして来た。 成績は上位トップグループだった。 一流大学であれば、いつでもどこでも学校推薦をもらえる(はず?)。 がしかし、三流大学の場合は、相手企業が一人とか二人程度の推薦人数しか決まらない不利なところがあった。 でも、日頃、大人しくしていた甲斐があった。
 第一関門のJ銀行は、学校推薦を勝ち取る。 (注釈-1)
 三流大学の学生は、当日の[筆記試験]と[面接]を課せられている。 試験日まで二週間しかない。 市内中心部の大型書店に行き、就職用のテキストを買い求め、毎日学習した。 女の子と遊ぶ時間など、全く無し。 次は[面接]への対応だ。 それまでの俺のヘヤースタイルはスポーツ刈り、いわゆるGIカットの短髪だった。 それでは銀行員の眼はごまかせない。 何とか髪を伸ばし、いわゆる「7/3」に分けた髪型に出来た。 (これで良し!) 試験当日、[筆記試験]は適当に出来た。 でも、[面接]は部屋に入るまで誰が面接担当者か当然わからず困った。 よく考えれば全員同じ条件だと気が付いた。 一流国立大学、東京・大阪・京都方面の一流私立大学の学生達を良く見ると、真面目そのもの青い顔。 [面接]の順番を待っている間、早く俺の番が来ないかと、楽しくなった不謹慎者がいた。 俺が呼ばれた。 ドアをノックして中に入る。 挨拶をする。 「椅子に座りなさい」と言われ座る。背筋を伸ばし一番偉そうな人を瞬時に判断。企業情報の写真で見たような役員だ。 質問に答える。 常にハキハキと。 [面接]の途中、人事担当者達の表情が崩れる。 「君の返答は面白くて楽しいネ」と。 (またやってしまった)と思った。 後は適当に自分の考えを自然体で答えて終了。 挨拶して退席。 (ダメだ。不合格だ……)と思い、その夜は、心配をしてくれた友人達と女の子達を集め合コンで騒ぎまくった。 明日から就職活動再開。 出直しだ。 三日後、就職課の前を通り過ぎようとした時、担当のお姉さんが俺を呼び止めた。 デイトの約束でもしたいのかと「何か用事?いつでもOKですヨ」と。
 「何を勘違いしているの?課長があなたを探しているわよ」
 就職課長の前に行き
 「次はどこを推薦していただけますか?」
 「どこも出来ないよ、J銀行に合格だ、内定だよ、おめでとう」
 すぐ一枚の用紙を出され
 「他の企業に行かないという誓約書に署名をして下さい。 他所へ行かないで下さい。あなたがもしJ銀行に行かなければ、来年の後輩達に悪い影響を与えます」
と、お願いされた。
 「わかりました、署名します」
 そのあとが大変だった。
 J銀行は地元では有名な一部上場企業である。 学園中に俺が「J銀行の銀行員になる」という臨時ニュースの主役になっていた。 まだ5月の中旬だった。 他の学生は今からが就職の準備だ。 俺は来年3月の卒業まで10ヶ月以上あった。 学園内の女子大生に急にもてだした。 今迄、俺のことを軟派の代名詞のように見ていた彼女達。 相手から話しかけて来る。 学園内でサイン攻め? (少しオーバー)同じ大学にいると行動がバレル。
 (イヤだ……)
 心の中で叫ぶ。
 軽く受け流す日々。
 「銀行員は真面目……」という、世間の噂がある。
 「私生活の女性関係も、当然うるさいのでは?」
と、遊びの娘(こ)達とこの夏限りと決めた。
 J銀行に就職が内定したことは秘密にした。
 それからは彼女達と俺の最後の「思い出作り」に専念した。 今迄の楽しかった学園生活。 馬鹿な俺に付き合ってくれた女性達!お幸せに……
 (ほんとうにありがとう……)
 夏の終りが来た
 すべての女の子に振られた俺がいた。
 秋から銀行員としての準備に入った俺。
 来年4月から俺のキャラで挑戦だ。
 (三流大学出身でも、チャンスがあれば世の中で勝負出来る……)
 そんな気持だ。
 「そうだ、お世話になった三流大学を一流にしてやろう。俺が企業の中で存在感を示せば必ず評価されるだろう」
 後に続く後輩達のことを思い、決意した。
 女性が好きで人も好き(感違いされてよくオカマちゃんに追いかけられた俺) 正義感も強く自由でのん気な調子の良い男だ。俺の行く道は決まった。
 世の中そんなに甘くない。
 「人に元気を与え、社会に役立つ人間を目指して!」
 俺の行く世界は、男の戦場だ。
 海兵隊魂だ!
 「決めた!『嵐を呼ぶ男』に変身する!」

     
  「嵐を呼ぶ男」(井上梅次作詞・石原裕次郎唄)
        俺(おい)らはドラマー やくざなドラマー
        俺(おい)らがおこれば 嵐を呼ぶぜ
        喧嘩代わりに、 ドラムを叩きや
        恋のうさも ふつとぶぜ   
  ・・・「この野郎、かかつてこい!最初はジャブだ 
     ホラ右パンチ!おつと左アツパー!・・・
       畜生、やりやがつたな 倍にして返すぜ、
         フツクだ、ボデイだ ボデイだ チンだ
          ええい面倒だい この辺でノツクアウトだ」


                                         <投稿:ジェームス赤木>

(注釈-1): 大学の就職部に採用依頼が来た企業の入社試験を受ける場合、必ず大学の推薦状が必要。 つまり『学校推薦』がなければ、希望する企業の入試を受けられない制度があった。 当時(物語の時代背景は昭和40年代前半)、オープンして間もない地方私立大学。 卒業生を送り出した回数は、主人公の場合で4回目(4回生)だった。 未だ、伝統ある中央の有名大学とは程遠く、一流企業からの採用枠が(一流大学と比較すれば)少なかった。 しかし今は違う。 主人公の指す所謂三流大学は、繰り返し優秀な人材を輩出し続けて地方の有名私立大学に名を馳せる存在にまで育った。 どの大学も、社会に出た先輩達の苦労と努力で歴史と伝統が培われていくもの。 まぎれもなく、社会に出て活躍した主人公の英知と努力の積み重ねは、現在の「この大学」を築き上げた礎であるか。 この物語の主人公は、すべからくパイオニア精神を以って社会に躍り出た、、、。   (旅遊亭編集部)

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