遥かなる愛(Part-I) by ジェームス赤木

  ― 遥かなる愛(Ⅰ) ―
                                by ジェームス赤木

(続)俺の青春時代。 大学三年生初夏。 夜の遊びの資金が少なくなってきた。 女の子から貢がれるのは俺の性格に合わない。 別れる時にもめる原因(もと)になる。 諸先輩には、「女の子に貢がせて別れ話しのもつれから貢いでもらった以上の代償を払った」という要領の悪い話を少なからず聞いていた。 「女の心理」をもう少し研究する必要があったのでは?と。 遊ぶ資金はバイトで稼がなければ。 友人からビアガーデンのバイトを紹介された。 ビアガーデンのボーイの仕事。 大好きな客商売の仕事だ。
このビアガーデンは由緒ある料亭の庭園の中にあった。 庭園は広く注文の料理が準備できるまで散策する人も多い。 夕方から、水銀灯の灯りで照らされた木々や、草花、池の水面をキラキラと反射させ、とても美しい景色。特に芝生のグリーンの色が鮮やかだ。 それほど幻想的ないい雰囲気(ムード)があった。
ある日、予約してあった家族連れが来店した。 地元中小企業の社長一家。 両親と子供(姉妹)の四名だった。 オーナーの案内でビアガーデンの中の特別席に入っていった。 接客担当として俺ともう一人のイケメンのボーイが指名された。 いつも気楽な極楽トンボ。 適当に仕事をしていた俺。 いつもは支配人が仕切るので特別席の担当になることはあり得なかった。 ビックリしたがオーナーから直々の命令だった。 その家族の姉妹が指名したらしい。 別メニューのフランス料理のフルコースだった。 いつもの酔客とは確かに違う雰囲気だ。 もう一人のイケメンボーイはプロだった。 オーナーからの指示で、俺に教えながら仕事をするように厳命されていたのでよくサポートしてくれた。 いつものように順調に料理を出し皿を下げた。「子牛のステーキ」で終わりに近づきホッとした。 ステーキ皿は少し大きく肩まで手で持ち上げ、調理したコツクからカツコ良く受け取った。 (あと少しで終わりだ)と。 ユックリと姉妹達がいる席へ。
姉は女子大一年生、妹は高校一年生。 どちらも色白でお嬢様育ちと一目でわかる美人姉妹だった。 特に姉はやさしく温和そうな人柄に見えた。 俺のタイプ。 でも、仕事中だ。 (いつか街で逢えば声でもかけようか)と。 それまで料理を運ぶのに一生懸命で彼女達への個人的関心はなかつた。 俺の担当は姉の方。 ただ鮮やかなピンク色のドレスは気になっていた。 肩に挙げていた料理皿を下げテーブルへ置こうとした時、彼女が俺の顔を見て「今日の料理はとてもおいしかつたワ」と眼と眼が合ってしまった。 可愛い目、美しい瞳だ。 次の瞬間、皿のバランスを崩してしまう。 彼女のドレスにステーキのタレをまともにかけてしまった。 (ああ無情。地震、カミナリ、火事、おやじ)だ。 誰かがオーナーに報告。 オーナーが飛んで来た。 スカートのタレをすぐふき取る俺。彼女の両親も慌てている。 彼女が一番落ち着いていた。 「いいの、私が悪いの。彼に声をかけた私が悪いの」と俺をかばってくれた。 感激した。 すぐオーナーが別室へ母親と彼女を連れて行く。 彼女の父親に「申し訳ありません。 私がすべて責任を負います。 弁償させてください」と申し出た。 沈黙。 彼女が帰って来た。 何事も無かった仕草で「パパ、彼を叱らないで叱るなら私を叱って」と。 眼に一杯涙を溜めて。 その一言で「そうか、わかった」と俺を許してくれた。 父親が紳士で良かった。 その筋の方であつたら小指を詰めるくらいでは済まなかったのでは? 再度「申し訳ありませんでした」と最敬礼する俺。 心の中で彼女のやさしさに感謝。
俺のまた悪いクセ。 助けてくれた彼女にひと目惚れ。彼女達のデイナーも終わりに近づいた。 デザートの特別サービス。 彼女のテーブルへ。 彼女の瞳は俺にクギ付け。 視線を感じ顔を見た。 (大丈夫ですヨ)と彼女の瞳。 可愛かつた。美しかった。 彼女にだけわかるようにそっとメモを渡す俺 「連絡して欲しい」と書いた、遊びの女性には教えない電話番号だ。 でも、妹にはバレた。 俺の顔を見てニツコリ笑った。 ませたガキ。 両親にバレないように祈る。
オーナーの命令で彼女達を見送ることになった。 帰り際、彼女がそつと俺の方を向いた。OKのウィンクだ。 彼女の連絡を待つことにした俺……   (第2編に続く
   「遥かなる愛」(二条冬詩夫作詞・石原裕次郎唄)
      (1)  思いがけない 別れのほうが 愛しつずけた お前のためさ
             つらい つらい ああ
            別れ雨ふる 街の灯が 夜更けの波止場へ つづく路(みち)

                                        <by ジェームス赤木>

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